食と暦|月夜篇  天体好きだというのに、東西に絶好のバルコニーがあるこの部屋に越してきてからというもの、ずっと悪天候で雲に阻まれっぱなしでした。先日やっと、快晴で最高の皆既月食を観賞することができました。バルコニーに椅子を出し、クリをもぐもぐ頬張り、友人と実況メールのやりとりをしながらの月光浴。下でカサカサ音がすると思ったら、のら猫一家が月明かりの下、大運動会をしていました。昼間に出会った時の警戒心はどこへやら、のびのび、ぴょんぴょん。カラフルな落ち葉がカサカサと吹く、優雅な月夜。  車から月の欠けを観ながら急いで家に帰ると、台湾から、好い香りがする小箱が届いていました。中から出てきたのは、なつかしい友の手紙と、紫色の石鹸。バルコニーに座って吹く風をくんくんしながら、月食観賞。包みに書かれていた石鹸の名は、青黛紫草根。月の浮かぶ夜空のような、あたたかな色  青黛紫草根 青黛|インディゴ 紫根|シコン +薫衣草|ラベンダー  台所から茹で栗をナイフで割って持ってきて、スプンですくいながらモグモグ月見。月と栗を交互に見てたら、栗が惑星に見えてきて、頭のフサが星の王子さまの住む☆みたい。ラベンダーの香りのせいかな。夜空を漂っているよな気分  博多曲物 秋になって、また新しい生活がはじまりました。博多曲物の工房にお手伝いに出かけています。曲物(まげもの)は、薄く削って板にした杉や檜の木材を、熱湯に浸けて柔らかくして、曲げてつくる器のこと。おひつ、弁当箱、膳、盆、菓子器、茶器などがあります。今年八十六歳になる三代目、無形文化財で博多マイスターの徳五郎おじいちゃんが、木を見立て、曲げて、カタチ造り、つづいて娘さんが山桜の皮で綴じ、絵付けをして仕上げます。ひとつひとつの工程、すべてが手仕事です。去年から弟子入りした女の子、薫ちゃんが、おじいちゃんと毎日もくもくと工房で作業しています。わたしはお手つだい係。おじいちゃんから聞くいろんな話しは、深く広く、やさしく、いつもずっと先を見ています。何事も受け入れ、柔軟に常に変わりつづけている。その姿に学ぶところがたくさんです。若くに片目が見えなくなり、片方の手の指は機械にもっていかれ、日々、あっちこっちひっかいたり火傷したり。この仕事の厳しさと、それをさらりと笑い飛ばすおじいちゃんの生き方っぷりに、ただただすごいと感じます。神事用の曲げは檜で作られます。乾いた木に湯が染み込み、ぱきぱきと音がして湯気が踊る。あたたかな香りの中、曲げて釘を打っていきます。たまに指もいっしょに打って悶絶!涙。。。新年用の準備です。ちいさな工房で、木の香りに包まれてすごす日々。薫ちゃんにつづいて、ここにやって来た私。薫と香。なんだかここに導かれたような、不思議な縁も感じています。  折敷 おしき お米や塩、餅、果物、海山のものなど、神棚のお供えものをのせるお皿。茶席では、お干菓子や料理をのせる  角を落とした角切り(すみきり)お供えものの時は、綴じを前に  放生会の道すがら、自転車屋台、博多一番太鼓のわらび餅発見!さくさく最中とひんやりぷりぷりわらび餅がたまらん!かぶりつきながら、夏が名残り惜しい帰り道  放生会|ほうじょうや  放生会名物の縁起物、ちゃんぽん、おはじき、新しょうが。  筆師、金太夫(きんだゆう)さんの画は毎年の楽しみ  掘りたての新しょうが。葉っぱはカゼ予防に、湯船に浮かべます。  今年のおはじきのテーマは「博多いろいろ」博多人形師が作る、厄を"はじく"縁起物。前日から並んで買うほど大人気です。  博多曲げもんが!ごぼ天かと思ったばい。笑  息を吸ったりはいたりすると、ぺこんぽこんと鳴るガラスのおもちゃ、ちゃんぽん  すべての生命を慈しみ、秋の実りに感謝するまつり、放生会  箱崎宮のそばにある柴田徳商店は、古くから宮の神具を奉納しています。お参りの前の手水舍(ちょうずや)の柄杓もそう。今、新年の柄杓を作っているところです。"てぼ"(博多祇園山笠のお汐井かご)といっしょに、好い顔で参拝客を迎えています。  大粒ねぎたこ焼き  鮎の塩焼と缶ビールの屋台。大将もいい味出してる  おなじみの懐かしい露店も変わらず、うれしくなる放生会。スマートボール、型ヌキ、射的、お化け屋敷、見世物小屋。コンテナの"氷の世界"の前で、今年もペンギンがダンスしてる♪笑 カニつり、うなぎつり、鯉つり...釣って食べる...あれ?生命を慈しむお祭りだよね?といつも思う。笑  一枚の木を曲げて器にする、曲げもん だから、みんなまあるい ふだんの日、ハレの日ケの日 むかしから、生活に寄り添っている道具 自然が育んだ木と、人が作ったカタチ 使い込むほどに変わっていく味わい ずっと変わらない、愛おしき生活美  ちびっちょでもおんなじ作りのてのひらおひつ 山桜の皮で綴じてるとこまでおんなじ 山桜の樹皮を薄く削ってなめして 木の重なりを縫うように綴じます。 淑子さんが肩こりと闘いながら 毎日せっせとお店で作業しています。 どの工程も、こつこつ手仕事です。  おひつを買ってくださった若い女性が、新米を炊いて使ったら、すごく美味しかった!とおにぎりを握って持って来てくれました。一粒一粒しっかりと弾力があって水水しいお米。頬ばるたび、ふわんと微かに木の香りがする。いくつもの手作業を経て生まれた道具が、手にした人の生活の中で生きていく。うれしいお裾分け、ごちそうさまでした。  中秋の名月。月を見上げていると、「あの人もこの月見てるかな」なつかしい顔、風景が浮かんできます。  お皿の上にもお月様、日出のまあるいパイナップルケーキ。チーズ風味のこんがり生地に包まれた、自家栽培のパイナップルあんがたまらない  袋のウラのコトバ。「パイナップル(鳳梨)は頭、スイカはお尻が甘い」台湾のことわざだそうです。  友人がおみやげで届けてくれる、台湾生協の愛文芒果乾(ドライマンゴー)肉厚で甘くてジューシーでたまらない。ありのままの美味しさ。うれしいふだん食のおみやげ  香ばしくて甘い、透き通る阿里山、頂湖茶  仙楂(サンザシ)と黒砂糖とハト麦を一週間以上煮つめて作るソフトキャンディ。食べすぎた時はサンザシを食べて消化を促す。美味しくてうれしい、台湾の自然のおやつ